dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

仁司方:「殺人ビーンズへの反撃」&「鋼の国の火星兵(マルス)」

自分でもなぜこのタイミングだったのか、そもそもなぜ今の今まで放置していたのかもよくわからないのだけれど、5,6年前の文フリで表紙買いした短編集をついこの間読み終わったので簡単に感想を書く。
2冊とはいえそこは両方合わせて200ページ行かないくらいですから、ボリュームとしてはむしろ少なめ。
筆者はBLEMEN(無礼面)というサークル?で主にSFとかファンタジーを書いている人らしいです。らしいです、っていうのは、一応文フリで買ったんですけど当時の記憶はほとんどないもんで売り子の記憶もないんですよね。話した記憶もないので、どういう人物かは不明。元々は独自のHPもあったようなのですが今は見れず。
ただ検索すればちょろっと情報は出てきます。

plag.me
BLEMEN 参加履歴・作品リスト - Plag!

二つ目のURLにはこれまでの作品が出ていて、表紙も確認できるんですが、まあぶっちゃけ表紙で買わせようとしていますよね、という。で、わたしも表紙に釣られて買ったので見事にその手に乗ってしまったわけですが、なんか一昔前の早川とか創元の文庫っぽい塗りにちょっと現代テイストの入ったデザインですごい好ましいんですよね、この一覧を見る限り近衛祐なる人がイラストを担当しているらしい。イラスト集があるっぽいので、ちょっと欲しいんですけど・・・。

そんなことより内容はどうなのよ、というところでしたね。
まず「殺人ビーンズへの反撃」について。
こちらには
・殺人ビーンズへの反撃
老人と海と毒薬
・偽薬
・Drining
の4つの短編が収録されております。

えーなんかこの人の全体に言えることなんですけど、起承転結が見えない。読んでいると「あれ、これで終わり?」といった感覚で起伏がないんですよね。あと隠しきれないラノベっぽさがある。「鋼の国の火星兵」に収録されている「眷属」っていう短編がモロで、なかなかきついんですが、ほかのにもちらほらその気が見える。
あと、固有名詞がなんかこう、これはいい意味でちょっと前の早川SFの翻訳っぽい感じがする。
この中だったら「Drining」が一番好きですかね。あの平和な感じとラストの唐突に突き放す間隔の感覚が。

2冊目の「鋼の国の火星兵」には
・眷属
・鋼の国の火星兵
・ハピネスランドの天然牛
・アンチ・デッド・キラーズ
の4作が収録。

よく考えたらこっちは全体的に文体といい設定といいラノベっぽさが強い。
鋼の国の火星兵は設定とかすごい盛り上げられそうなんですけど、結局あんな重量のパワードスーツ来てこれといったアクションもなく軋轢もなく終わってしまうというのがもったいない。
眷属は地の文も科白も全体的にきつい。昔の自分を思い出して本当にきつい。そこまでラノベ方向に振り切らなくてもいいのに、という気がするんですけどね。
ハピネスランドの天然牛はなんというか、ある種の日常系的というか。なんかキャラクターがどうしてもラノベ寄りなんですよねぇ。
アンチ・デッド・キラーズは多分、設定は完全にラノベのそれ。それが悪いというわけではなく、クリシェエピゴーネンを読まされているとしか思えなかった。

個人的には[「Drining」はそれなりに好きですがほかはちょっと苦手な要素が多くてきつかったかもです。まあ好みは別にしても、もうちょっと全体的に起伏があるか叙述ギミックを使ってくれたら楽しいかなと。