dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

文章量が正義なのは小中学校の読書感想文まで

である。
とかく、私のような貧乏性な人間は本の値段と本の物理的なボリュームで購買の有無を判断しがちである。
もちろん、ページ数によって値段が変わってくるということは普通にあることだし、それ自体はことさら取り上げることでもないのかもしれない。それに、文字数が少ないとそれだけ表現の幅が狭まってしまうということはあるだろうから。特に公的な書類だったりするときには。
ただ、ふと思った。中学生の頃の夏休みの宿題で読書感想文が出されたときのことだ。
友人の一人が読書感想文の対象本として「エルマーのぼうけん」を挙げたのである。当時の私やほかの友人も「そりゃねーべ」「ダメでしょ」と野次を飛ばしていた。
クラスが違ったのでその後どうなったのか具体的には知らないのだけれど、ここで私が言いたいのは「なぜ当時の私たちは絵本を読書感想文の本として認められないと思ったのか」ということである。
もちろん、それは媒体的な違いもあるだろう。絵本は漫画ほどでないにしろ視覚的な側面を多分に含むものだし、いわゆる散文などに比べると相対的に文字の量が少ない。
しかし私は、どうも後者の部分がこの読書感想文という宿題においてしがらみになっているように思えるのである。
じゃあ、ゾロリはどうなる。あれは確かに絵本ではあるが、絵本に比べると文章の量も多い。それに、小学校のときはゾロリもありだったような気がする(うろ覚え)

要するに、文章の量という部分で価値判断が左右されすぎるきらいが(少なくとも自分の中では)あるということdes。もちろん、そうでないことだってたくさんあるし、文章量もあって内容も伴っているものだっていくつもある。
しかし、今回の本はその自分の価値観の誤謬に改めて疑義を呈してくれた本だった。

ジャッキー・フレミング 著/松田青子 訳:「問題だらけの女性たち(原題:THE TROUBLE WITH WOMEN)」です。

この本は言ってしまえば絵本のような形式になっていて、1頁ごとに絵があって、その絵に対する歴史的フェミニズム的な視点のアイロニカルな言葉が添えられている本なり。
例えば最初のページ(厳密には違うけれど)にはひげもじゃの紳士が虫眼鏡を使ってテーブルの上にある小さなものを覗き込む絵が印刷されており、絵の上に「かつてせかいには女性が存在していませんでした。だから歴史の授業で女性の偉人につて習わないのです。男性は存在し、その多くが転載でした。
と言葉が添えられている。
とまあ、こんな感じに一言二言あるいはもう少し長い文章もあったりはしますが、どれだけ長い文章でも1ページの文章を読むのに20秒もかかりません。
しかし、皮肉で満ちたその短い文章のそれぞれの中には女性の抑圧の歴史が刻み込まれています。
元々歴史は苦手な科目ではありましたが、しかしそうでなかったとしてもこの本の中に出てくる女性の中でわたしが知る名前はヴィクトリアくらいだったでしょう。
しかし、それに反してこの本の中に出てくる男性の歴史上の偉人はダーウィン、ルソー、ピカソ、カントなどどこかで名前を聞いたことのある人物ばかりです。もちろん、キュリーなどの女性の名前もあがりますが、「無知な私でさえも知っている偉人」が明らかに男性側に偏っているということを改めて認識させてくれるわけです。

この本は、しかし物悲しくもある。というのも、この本の中では黙殺されたあるいは語られる機会を剥奪された女性の名前がその行動・行為・功績とともに挙げられる。しかし、男性偉人に関しては特にその功績や行為について直接的に言及されることはない。つまるところ、これは男性偉人の名誉や功績を普遍化された自明の事実であることを認めているのである。それ自体が一種の皮肉にもなっているのだけれど、それに対して説明を付記しなければならない女性偉人の認識の不全を際立たせてもいる。この構造が、悲しい。少し、体を張る女芸人にも似ている。気がする。
そして、その功績が自明なのだから、わざわざ言及はせず、それゆえに功罪の罪をひたすら晒し上げるという体裁になっているのである。

かといって、肩肘張って読むような本ではない。むしろ、イラストとアイロニーに満ちた文章の可笑しさに笑えばいい。笑って、冷静になって、考える。サウスパークのようなものだ。あちらほどの爆発力やユーモアは期待してはいけないけれど、また別の視点を与えてくれるだろうから。

最後に、個人的に一番好きなページを載っけておきます。

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このダーウィンを見る彼女の顔が個人的にツボ。ここに至るまでに男性側の「なぜ女性は~なのだろう」という恐ろしいマッチポンプ男根主義な盲目さで、本気で言っているのであれば狂っているとしか形容のしようがない流れからのこのページだったために、普通に笑ってしまいました。