dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

アナ・マトロニック著・片山美佳子訳:ロボットの歴史を作ったロボット100

 4時間ぶっ通しで1冊の書籍を読み進めることができたのは本当に久しぶり・・・どころか、もしかすると初めてかもしれない。漫画を徹夜で読んだりしたことはあるけど、1冊というカウントはできないし、4時間の読書時間に耐えうる長さの1冊の漫画というのもそうあるまい。
 もっとも、読書時間に関しては単に「読むのが遅い」だけとか陽のあたる場所に移動したり姿勢を変えたりトイレ行ったり、本の情報をメモしたりとか、純粋に「読む」という行為から逸脱した行為が多かったということもあるのだけれど。しかし、そういうことを考えると一体どこまでが「読書体験」として勘定していいのかがわからなくなってくるような気もする。

前置きはこの辺にしておいて、今回読んだのは「ロボットの歴史を作ったロボット100」という本なんですな。本といっても発行がナショジオ「グラフィック」ですから半分以上を画像が占めているわけですがね。
これがどんな本かというと、本のタイトルどおりなんです。執筆者のアナさんが彼女個人の独断と偏見とロボットフリーク的な常識と歴史的な背景から100種類(実際はそれ以上ですが)のロボットを選んで紹介していく、という本でござい。
アマゾンの商品説明がかなり詳しかったのでそちらを引用させてもらいましょう。ちなみに、アマゾンのサイトでは中身がどういうふうに構成されているのかわかる商品内のページのサンプルがあるので、それを参照するとイメージがつきやすいかも。

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内容紹介

懐かしのロボットから、最新のロボットまで!
人類の友として、敵として、助手として、あの活躍にわくわくしたロボットが勢揃い。

ロボットを偏愛する著者が、古今東西のロボットからベスト100を紹介。ギリシャ神話から鉄腕アトム、実在する人物の人格を移植する試みのBINA48まで。
C-3POベイマックス、チャペックのロボット、アシモフ作品、ターミネーター草薙素子、データ、オートマトンAIBO、ビッグドッグ───。

かつて皆が胸を熱くしたロボットが活躍する物語。
夢物語から現実へと浸食してきたロボットについて、神話の時代から現在まで、数千年におよぶタイムラインからロボットのベスト100を選出。

前半ではギリシャ神話やSF小説、テレビドラマや映画などのフィクションに登場するロボットを紹介。
後半では、機械仕掛けの時計から、死後も生き続ける人格を完全に移植することを目指したロボットまで、科学者たちの挑戦と世界の現状を紹介する。

【目次】
◆はじめに
◆空想のロボットたち
・召使い、相棒、助っ人
・暴走する殺人マシンと人類支配をもくろむファシスト・マシン
・心を持つロボット
・兵器としてのアンドロイドとガイノイド
・自意識を持つロボット
・サイボーグ
◆現実のロボットたち
・初期のプロトタイプ
・未来が来た!
◆コラム
・アートとファッション
・電子ゲームとコミック
・音楽の世界のロボット
・ロボットが集まるイベント
・理論とトランスヒューマニズム

【著者紹介】
アナ・マトロニック
ミュージシャン、映像アーティスト、ラジオパーソナリティ。バンド「シザー・シスターズ」のボーカル。アルバムはオーストラリア、オーストリア、ドイツ、アイルランドスウェーデンでトップ10入り。
ロボットを愛するあまり、右腕にロボット回路のタトゥーを入れ、ロボットにインスパイアされたステージネームを名乗る。BBCラジオ2のクリスマス特番でロボットについて語る番組を担当した。日本ではスカパー! が2015年末に「アートナイト:アナ・マトロニック」を放送した。夫のセス・カービーとネコのイジーとともに米国ニューヨーク、ブルックリンで暮らす。

出版社からのコメント

ロボットの登場する作品は、テレビ、映画、コミック、小説と、あまたあります。きっとみなさんにも、すぐに名前が浮かぶ、お気に入りのロボットがあるのではないでしょうか。
著者がおそらく世界一有名なロボットのコンビだと書いているC-3POR2-D2から本書はスタートします。「機械仕掛けで動くもの」をいかに昔から人が夢想してきたか、夢想が現実味をおびたときどのようなストーリーが描かれたのか。
収録されている作品はほぼ日本でも紹介されたものです。日本からは鉄腕アトム攻殻機動隊草薙素子などが紹介されています。懐かしいロボット、愛されるロボット、危険なロボットなど、個性豊かなロボットの世界をご覧ください。


とまあ、こんな感じ。
私自身はロボット好きですが、彼女のように世界中のありとあらゆるロボットの情報を蒐集しているわけではなかったりする。この本を手にとったのは、ネットサーフィンしてリンクをジャンプしまくってた先のサイトで紹介記事があって軽く興味を持ったからという程度だし、この本以上に読みたいのがいくつもあったからしばらくスルーしていたんですが、1000円割引のクーポンがたまたま発行されたのでそれを使って購入。
これ、おそらく原語版が出たのが2015年前後だと思うんですが、邦訳版が出たのが2017年の頭だったということで、結構なラグがあるわけですね。なので、サイボーグの章や実際にあるロボットを紹介する章でやや物足りなさがあったりはする。
どうでもいいことですが、2018年の4月に新品で買ったんですけど、わたしの手元に届いたのが第1版の1刷だったんですよね。これ、もしかしてあまり在庫捌けてないのかなーと思ったり。たまたまかな。

内容に関しては、基本的に「へーこんなのがあるのかー」という純粋に関心が湧き出る内容。ぶっちゃけますと、日本ではあまり知られていない作品が多いのでそう感じるだけ、という部分もなきにしもあらずですが、しっかりとアトムや草薙素子や鉄人28号(28号はコラム的に触れれているだけなんだけど)といったものから、広告デザイン(空山基のセクシーロボットがエロい)に用いられた特徴的なロボットまで「広く(それなりに)深く」といった感触。
個人的にはカルチャーとしてのロボットではなく実際に歴史を辿って原初のロボットを紹介するのが良かったですね。「初期のプロトタイプ(EARLY PROTOTYPES)」という章で紹介されるのだけれど、そこで一番最初に紹介される11世紀の「蘇頌の水運儀象台」という、ロボットという単語からはイメージしにくい「時を刻む速さを一定に維持する技術を用いた装置」の先駆けとして紹介されていたり。

ともかく読んでいて楽しい。
ただ、著者があらかじめ語るようにバランスを保つために義務的に盛り込んだであろうロボットについては、彼女の思い入れがあるであろうロボットの紹介に比べると明らかに熱量に差がある。そういうのがある意味でいかにもオタク的というかフリーク的で面白かったりもするのだけれど、自分の大好きな「トランスフォーマー」がウィッキーさんの導入レベルの紹介にとどまっているのはいただけません。
ていうか、ほかのロボットの紹介に比して「トランスフォーマー」だけ露骨に「お前実はトランスフォーマー知らないだろ」な文章なのですよ。「鉄腕アトム」との文章に比べると泣けてくるくらいテキトーです。
あと邦訳部分もちょっとアレでしてね、見出しが「オートボット(サイバトロン)とデストロン」というふうになっているのですよね。オートボット(AUTOBOTS)というのは本国でのヒーロー(と言い切れない部分がTFの魅力なのですが)側の勢力の名称で、()のサイバトロンというのが日本での放送にあたってローカライズした名称なのですよ。で、語感からもわかるようにデストロンというのがヴィラン側の勢力の日本語名称なわけですが、本国ではディセプティコン(DECEPTICON)となっておりまして、そうすると見出しの情報が明らかに不足していたり()の付け方がおかしかったり、というのがわかるわけですね。

これは翻訳にあたってのロストみたいなものなので原著でどうなっているのかはちょっと微妙などころですが、知っている人からすると粗がまったくないとは言い切れない部分もあります。

あとサム・ライミの「スパイダーマン2」に出てくるドクターオクトパスもこの本の中で紹介されるのですが、彼の紹介自体はともかく作品に対する筆者の感想に対して


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         ,r'";;;;:::::;彡-=―-=:、;;;;;;ヽ、
        /;;ィ''"´  _,,,,....ニ、 ,.,_ `ヾ;;;;〉
         `i!:: ,rニ彡三=、' ゙''ニ≧=、!´  屋上へ行こうぜ・・・・・・
        r'ニヽ,   ( ・ソ,; (、・')  i'
         ll' '゙ ,;:'''"´~~,f_,,j  ヾ~`''ヾ.  久しぶりに・・・・・・
        ヽ) , :    ''" `ー''^ヘ   i!
        ll`7´    _,r''二ニヽ.     l  キレちまったよ・・・・・・
        !:::     ^''"''ー-=゙ゝ    リ
        l;:::      ヾ゙゙`^''フ    /
        人、      `゙’゙::.   イ

と思う部分もあったりはします。
しかし、それすらも楽しめるのがこの本の特徴でもあると思います。
個人の純粋な熱意によって成り立っているがための、中立性や客観性を欠如したストレートな思いが伝わってくるがゆえの楽しさというか。

それと日本版にはアイボとアトムとボイラープレートのトリコロールな表紙のカバーになっているのですが、それを外すとホラーテイストなマリア(かな?)の顔が表紙になっていて、一粒で二度おいしい装丁になっております。

これ一冊で古今東西を網羅できるというとあまりにも過言ですが、ロボットの歴史を概観しつつ所々で爪の甘さやこだわりが発揮される起伏のある読み物ではあるので飽きずに読むことはできると思います。

めちゃくちゃ豪華なロボットの同人誌と考えれば、中らずといえども遠からずでしょう。