dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

待たせたな

誰も待ってねぇよ、というセルフツッコミもそこそこに久しぶりに読書感想を書こうと思い立つ。
実のところ一ヶ月前には一冊読み終わっていたのだけれど、すぐにほかの本に手をつけていたがために読み終わらず、しかもブックオフで年末年始のセールがやっていて余計に読みたい本が増えてしまう始末。しかも直木賞芥川賞の候補になった小説にもいくつか気になるのがあってもうてんてこ舞いです。
そんなわけで積ん読本がどんどん増えていくので、とりあえず少しでも書き下しておこうと。

で、今回読んだのは海外の児童文学と評論文。
児童文学の方は「ぼくが消えないうちに」という本で、作者であるA.F.ハロルドの邦訳本はこれが初ということ。出版は一年以上前ですが中古はあまり見かけないですね。児童文学ってわけで挿絵だったり表紙がモロに絵なんですけど、結構この絵柄好きなんですが、挿絵を担当した(挿絵は今回が初らしい)エミリー・グラヴェットはイギリスを代表する絵本作家なのだとか。わたくしめはこの本で初めて彼女の存在を知ったのですが、邦訳数はともかく2007年には邦訳された絵本が出版されていたので少なくとも10年前には注目されていた模様。情弱なり。

この本はいわゆるイマジナリーフレンドを題材にした本なのですが、まえがきを読むとハロルドもエミリーも幼少期にイマジナリーフレンドが見えていたのかな、と。だからこそ、この本を書いたのだろう、と。冒頭に添えられているクリスティーナ・ロセッティの詩がこの本の全てを表しているといっても過言ではないので、ぶっちゃけそこを引用してしまえば作者の思いみたいなものはわかる。内容は一種の冒険小説というか、2分間の冒険的というか、子どもの想像力を大人が代弁しているとでも言いたくなる「想像力の本」であると。
それと記憶の物語でもある。読んでいてワクワクする場面もありますし、思わず涙が出そうになる場面もありますし、「今はなき古き友への弔い」としての物語でもあって、そこは素直に泣けるんですけど、いかんせん「トゥモローランド」な選民思想が見え隠れしてねぇ・・・。
劇中に登場するイマジナリーフレンドの一人であるエミリーがこう言うんですよ。
この子どもたちってね~中略~見えないお友だちが必要だったり、ほしいと思ったりしてるのに、つくりだすだけの想像力がないの。それができる子は、めったにいないからね。ほんとに輝くほどの、すっごい想像力を持ってる子だけだから
この本の世界ではイマジナリーフレンドの集まる世界みたいなものがあって、主人公のアマンダのイマジナリーフレンドであるもうひとりの主人公のラジャーが、イマジナリーフレンドの先達であるエミリーにイマジナリーフレンドがなんたるか、という説明を受けるシーンでの台詞なんですよね、ここ。
いやいや。いやいやいや。それじゃ子ども万人が想像力を持つっていうメッセージにならんのですよ。いやね、最初からそういうメッセージを伝える本じゃなくて、あくまで個人的な体験に基づく個人に向けたフィクションとしての側面が非常に強いので、そのメッセージを発することがこの本の中で何か矛盾をきたすとかそういうことではないんですけどね、児童文学でそんな非情な一面を垣間見せなくてもいいじゃんすか。
内容が好きなだけに、こういうちょっと選民思想な部分がちょっと鼻につくんですよね。好きな描写とかは結構あるんですけども。真っ暗闇になった瞬間の表現としてページを真っ黒にしたりとか、文章だけじゃなくて本全体としての表現もかなり秀逸で手が込んでいるので、普通に読む分にはいいんですけど、コンプレックスをこじらせた自分が読むと作者の(あるいは邦訳者の)悪意なき蔑みみたいなものが垣間見えちゃって煩悶としちゃうんですよ。

それでも、やっぱり文章表現として気に入る部分も多々あって「冒険、というよ冒険の足がかりを失いたくなかったのだ(だれかに話しかけられたときに、読みかけのページに親指をはさんでおくのとおなじだね)」
とか、「ママの指先からまっすぐに洋服ダンスまでのびている、目に見えない線をたどった」とか、そういう些細な挙動や動作や状態なんかを小説ならではの言葉の妙で表現されたものが自分は好きなので、そういうのがそこそこ見られて良かったですしね。
減点方式だとかなり下がりますけど、加点方式だとかなり上がる、といった感じの本でした。

評論N方は「いじめは生存戦略だった!?」という本だったのですが、こちらは正直いって微妙の一言。何か新しい発見があるというわけでもないし、ほとんどが既存の論文の引用だし本全体としてのまとまりもないので全部を通して読むというよりは各章の気になる部分を読めばいいな、という印象。
ただ、意味不明なタイミングで挿入される説明になっていない説明図とか表とかは「ギャグマンガ日和」的なシュールな笑いがあります。個人的には「図1 つつかれてケガをしたニワトリ」というのが吹き出しました。いや、だって本当に必要ないんですもん、この図。絶対ページ合わせるために後から差し込んだだろう、という面白さがあります。
個人的には「文系の人にとんでもなく役立つ! 理系の知識」に次ぐダメな本(は言い過ぎですが)で、まあ人にオススメするような本ではありませんね。ふいに笑えたりはしますが、知的欲求を満たすために手に取る価値はあるかというと、そうでもないですねぇ。とかいい付箋貼りまくってはいますが。
この本をきっかけに、というのはアリかもしれませんが、これ1冊で何か知見が広がるというのはなさそうです。