dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

日本の軍歌 国民的音楽の歴史

辻田真佐憲著の評論文。
どんな本かといえば「軍歌って何よ?」という本である。かなりざっくりしているけれど、主に第一次大戦前後から作られた日本の軍歌の衰退までを時系列的に解き明かしていく本です。
当時の軍歌がどういうものだったのかとか、実は思っているようなものではないのではないかという疑問を投げかけるものである。
特に興味があったわけではないのになぜか買ってしまった本なのですが、やっぱり興味関心の有無というのは読書におけるモチベーションにはかなり重要なものなのだと痛感いたした。

軍歌に対してまったく思い入れというものがなかったこともあって、著者の「軍歌は必ずしも戦争扇動や右翼的なものであったというわけではない」という主張に対して反発も同意もできず「ああ、そうなのか」という程度にしか思えなかったのがまず第一の蹌踉。
とはいえ、興味深いのはエンタメとして消費されるものと見た場合に軍歌が辿る道筋というのが、まさにエンタメ業界の構造そのもの(というか市場経済の力動か?)といった感じで面白かった。著者はエンタメ市場の流れを先に知っていて軍歌をエンタメとして位置づけようとしたのか、それともその逆なのかそこまではわからないが、まさにエンタメとしか言いようがない。
どういうことか。つまり、何かが流行る→無数のエピゴーネンが生まれる→衰退するという大きなサイクルにぴったりしているということ。もっとも、軍歌が消えた根本的な理由はひとえに戦争の放棄にあるわけですが。形を変えて当時の軍歌が生き延びてはいても、これから新しく軍歌が作られることは少なくとも北朝鮮が錯乱しなければありえないでしょうし、仮に北朝鮮がしかけてきたとしても日本が積極的に参戦する未来は想像しづらいですし、やっぱり新たな軍歌は生まれにくいというのはある。
そもそも、戦争のあり方そのものが変容してきているわけですからね。