dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

武田砂鉄:コンプレックス文化論

 タイトル詐欺じゃないのだろうか、これ。だって全然文化論じゃないんだもの。コンプレックスを持った著名人にインタビューしたものを掲載して、それぞれの章に強引なこじつけのような前書きと後書きを加えたものだ。だから、なんというか、私が思っていたような精神分析だとかそういった体系的にまとめられたものではない。
 や、ちゃんと調べもせずにタイトル買いした自分の落ち度なんですが、思ったのと違うものだった。だからといって読み応えがないかというと、そうわけでもないのだけれど。
 特にインタビュー以外の部分での著者のかさ増しとも思える考察もといこじつけが面白い。純文学とか古典映画とか、それっぽい作品をいちいち援用してくる部分とか、本の雰囲気と合致していていい意味で小賢しい。
 あとはインタビューの中でちょいちょいメディア批判めいたものが図らずして浮かび上がってくるのも、インタビューとかエッセイとかあまり読まない自分にとっては新鮮だったかな。
 とはいえ、論拠が全体的に一般論への共感という部分で成り立っているため、科学的にとか学術的にとか、そういう自分の期待した部分は皆無なのでやっぱり肩透かしなのは否めないかなぁ。
 あとはまあ、インタビューという形式上しかたないのかもしれませんが、インタビュアーのスタンスが尻軽なんですよねー。相手に気持ちよく話してもらうためにヨイショはやっぱり必要なのでしょうが、この本みたいに別の人物のインタビューを連続で読まされるとどうにも浮薄な印象がして、コンプレックス持ちの自分としては少なからず反感を抱かなくもない。
 この辺のバランスって、案外難しいのかもしれない。記者会見なんかみたいに、ある特定の答えを導こうとするのもそれはそれで誘導尋問でしかないので不快なのだけれど、ともかく相手を気持ちよくさせるというのも、やっぱりどうかと思う。
 ていうか、コンプレックスがあったから云々ってカオス理論のそれとしか思えないので、やっぱりこじつけという気がして著者の意見はあまり信用できない。前述のとおり尻軽スタンスだし。たしかに、こと芸術方面ではコンプレックスやトラウマといったものが重視されることは多い。ガチでトラウマを植えつけられた人なんかは、脳の防衛機制の面からそういう風なりやすいというのは一応科学的な論拠としてあるにはあるのだけれど、この本に登場してくるのはそういうタイプではない気がするしなぁ。
 まあ読んでいて面白いものではあるので、自分みたいにひねくれてない人は単純に笑える読み物として受け止められるんじゃないかしら。

 リア充が上から目線でコンプレックス持ちを半笑いで睥睨する、見世物的な読み物としては秀逸だと思う。うん。だから、平均的なリア充こそこぞって読むべきかな、これ。