dadalizerの読書感想文

読んだ本の感想(誤謬アリ)を綴るブログ。オナニープレイ。

なんもかんも体制が悪い

久しぶりの読書感想。実を言えば、前回のポストから今回のポストの間にいくつか本を読んでいたのですが、どうにも感想としてまとめるにはボリュームがありすぎて大変だったのと、単純に忙しかったのがあってできずじまいだったんですよね。
しかしそろそろ更新したいなーと思っていたときに学友から借りた本がスイスイ読めて感想も書きやすかったので勢いに任せて書く事に。

さて、そんなわけで今回読んだ本は小林エリコ著「この地獄を生きるのだ うつ病生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで」でございます。
ラノベよろしくタイトルで全てを説明しておりますので、概要とかは特に必要ないでっしゃろ。

この本は最初の「はじめに」のページでいきなり懺悔からスタートします。万引きの懺悔を。コンソメを万引きしたことの懺悔を。398円を。万引きといって思い浮かべると、大体の人はその行為に至った理由を出来心なんかに起因していると考えると思う。少なくともわたしはそうだった。
けれど、この人は違う。この人は、貧しくて万引きしたのだ。大根と鶏肉のために。そういう人が日本にいる。そんなことは、「万引き家族」を見るまでもなくわかることだけれど、普通に生活しているとそういうことに気が回らないし意識することもない。自分だって、この本を読み終わった今となっても、普段の買い物の中で小林さんのような人が同じ空間にいるかもしれない、などと常に気を払うことなどないだろう。仮にできたとして、何かが変わるというわけでもない。そういう現実を突きつける本である。
まあ、著者に関してはぐぐればたくさん情報が出てくるので、そちらを参考にしてもらえれば(って誰に言ってんだ)。

さて、この本の構成としては「はじめに」の懺悔からはじまり、目次があり、全部で7つに章立てされている。それと、彼女自身が書いた「女編集者残酷物語」というコミックも収録されている。
それぞれの章は以下のようになっています。ページ数は普通に単行本の厚さなんですけど、紙が厚いのとページあたりの文字数が少ないく一人称で語られていくのと、所々に著者の内心のツッコミがあったりして、重い内容に反して笑いながらスムーズに読み進められる。いや、笑えないんですけどね。ちなみに、各章の章題はこんな感じ↓

1章:精神障害生活保護、自殺未遂
2章:ケースワーカーとの不和
3章:「お菓子屋さん」とクリニックのビジネス
4章:漫画の単行本をつくる仕事
5章:普通に働き、普通に生きる
6章:ケースワーカーに談判、そして
7章:人生にイエスと叫べ!
おわりに
特別収録 コミック「女編集者残酷物語」

まあでも、話自体が繋がっているので章わけしなくてもいいような気もする。21歳で自殺未遂をしてからクリニックのデイケアに通うようになったり、そのデイケアでほかの精神障害者と一緒にお菓子を売ったり、ボランティアとして漫画の単行本をつくる仕事を始めたり、と、文字ヅラだけだとうまくいっているような印象を受けなくもないが、ところがぎっちょんてれすくてん。
このクリニックがかなりの曲者で、この「お菓子屋さん」にしても患者の意思なんてほとんど介在しない(著者の視点のみの印象なので実際どうかはわかりませんが)し、ワーカーも仕事をしない(特に二人目のパーマさんのデリカシーのなさは罪でしょうもう)し。
個人的に一番衝撃的だったのは、クリニック(ていうかまあ医療機関全般そうなんだろうけど)と製薬会社との関係性。有り体に言えば癒着。精神科においては診断名が変わることはよくある、というのを精神科医の先生から聞いたことがあって、それはまあ精神疾患の診断名というのは病態に関してつけるものだし精神疾患自体が非常にスペクトルなものだから、そのときどきに合わせることはまあおかしくはないのだと。しかし、この本の中ではうつ病と診断されていた小林さんがある製薬会社の営業担当者がクリニックに出入りするようになってから統合失調症に変えられた、という話を書いていて、そういう立場の異なる当事者の話(医者と患者)を見比べると、果たして何が真実なのかわからなくなってくる。
しかし、ICD-10でもわざわざF2とF3でカテゴリ分けされているのに、そんなかんたんに横断するものなのだろうか。まあアメリカではピザが野菜として認められるくらい利権でガッチガチなのを考えると、属国(爆)である日本が追従しないはずもなく、というかどの国でもこういうことはあるので、小林さんの通っていたデイケアでは少なくとも利権がらみのことがあったと考えてもいいでしょう。
それと同様に驚いたのは、彼女が自殺を図ると、なぜかデイケアを追放されたこと。まあ外来は通えていたようですが、なぜデイケアを追放されたのかコレガワカラナイ。いや、言い分としては「自殺しないって約束したのに!裏切り行為よ!」ということらしいのだが、それをどうにかするのが医療機関や地域施設なのではないか。まさにソーシャルインクルージョン(笑)。
ていうか、社会的包摂っていう概念を体制側が体の良い民間への押し付けに使っているようにしか思えないんですよね。
ほかにもワーカーの職務怠慢や決めつけ。いや、私は割と本気で公務員(議員含む)を全員ロボットにしたほうがいいと思うんですよね。そうすりゃこんなこと起こりませんよ、多分。少なくとも金によって何かがないがしろにされるということはなくなるのではないか、と。や、ロボット(ていうかAIかしら)の論理回路をどう設計するのかとか、色々考え出すと細かい部分で指摘できそうではあるんですが。

しかし就職氷河期とはいえ月給12万で残業代社会保険なしのところに就職するというのはやはりいくらなんでも・・・小林さん自身はこのときの体験を肯定的に捉えてはいるのですが、しかし社会全体として考えたときに彼女のように低賃金でも働こうとする人がいる限りこういう会社は有り続けるんですよねきっと。
まあこれは自己肯定感のなさ(個人的な要素。といってもその価値観を形成するのは環境でもあるので、一概にいえないけれど)と環境管理型権力(環境要因)の合わせ技による社会の構造の完全に起因するものなので、何とも言えないのですが。完全にやりがい搾取なんですが、彼女自身が肯定的に捉えている、それ自体がほとんど社会の悪逆な構造とも言える。
私から言わせれば、こんなもん肯定したくはない。や、彼女の感じた達成感や労働努力自体はむしろ肯定されるべきなのですが、それによってこのような環境をのさばらせるのは言語道断なのだと思います。

やっぱり権力を持つとロクなことになりませんよ、ほんと。
生保引き下げ&国家公務員の給与引き上げ。生保受給のバッシングを煽るようなメディアの報道がある一方で生保で縛り付けようとするワーカー・医療従事者、かと思えば公務員がジャンパー着てバッシングとかね。
いい加減にしてほしいですね、ほんと


どうでもいいことですが雨宮処凛さんと同じ匂いがします、この方。